ドキュメンタリー写真の綴り方 

三十路にして会社を辞めた自称写真家が日本全国の高速道がある風景を撮影行脚していく写真日記です。旅先の写真や世界の写真紹介を主にやります。その他趣味の生活なんかも併せて載せていきます。

硫黄島からの手紙

2006-12-23
父親たちと星条旗に続く硫黄島映画の二作目。一番最初に出てくる硫黄島慰霊碑の揮毫が岸信介なのは全く非道な事実ですね。 アメリカが作った映画として敵側が猿でなくって、アメリカ人と同じ様な普通の人間であるように描写した事は画期的だそうで。日本の軍部・天皇制の描写がえっ!と言う感じでしたが、硫黄島の塹壕戦に入ってからの「天皇陛下万歳」「自決」といったシーンは中々でしたが、全体としてアメリカの乾いた、明るい視線で映画全体が流れていて、日本のじめっとした、湿潤な、絡みつくような、隠微な、そういう画がホトンド無かったのは残念ですが、なんといってもアメリカ映画ですから。
 実際には、戦闘が不可能になっても投降せずに穴に篭もり続けるといった自体は長期間続き、アメリカ軍は穴を水で満たしその後にガソリンを注ぎ込み火をつける、といったことが行われています。そこまでされても、なお穴から出ていかなかった人もいました、如何にあの当時の日本の教育が壮絶であったかを示しています。
 二作続けて見ると、リアルな戦闘再現シーンも厭きてきます。人間は刺激にすぐ慣れる、そしてもっと強烈な刺激を求める。やはり戦争を描く場合に派手な戦闘シーンでなく、そこに関わる人間の生への執着や人殺しへの葛藤・慣れといった点を見る側に突きつける、そんな映画でないと一時の娯楽で終わってしまう危険性があります。その点「麦の穂を揺らす風」は傑作でした。
 しかし、一番思ったのは、なぜ日本でこのような映画が作られていないのか?日本人自身が軍部の被害者でございっ、て反戦映画は(ちょっとは)ありますが、東条英機を英雄にしたり、戦艦大和やら特攻隊の青春とか、そんなんばっかで、あの時代の生の皮膚感覚に迫るような、天皇ファシズム制を正面から捉え、植民地として沖縄・台湾・朝鮮・満州を領有し、アジア全域で2000万人以上を殺した、そういった過去の事実に向かい合って、かつ、素晴らしい劇映画が日本で作られていないのは、残念でなりません。
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あるいは裏切りという名の犬

2006-12-20
おフランスの映画で、刑事同士の暗闘を描いたかっちょいい映画です。主役のダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、二人ともいい「おっさん」味だしてます。イメージ的にちょっと新宿鮫に通じるモノも感じたり。
 ただ、映像と編集が大味なので脚本と演技を殺してるなあ、とも思います。娯楽作として上映時間全部楽しめる中々の品でわないかと。

→公式HP
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新書で読む格差

2006-12-19
総中流社会という幻想が崩れ、中流抜きの上と下に階層が固定化された戦前のよーな社会へと逆走中の日本。今、国の中核に居座っている連中が今後も権力と富を寡占する電子封建制へとこのまま進んでいくのか、それとも貧乏人が結束して国に抵抗し新しい道を切り拓くのか?(私は下流の人ですからして、勿論後者ですが) 各書とも新書で手軽に読めますが、中身はかなり本格的です。今後の社会を如何に構築していくか、を考える上でも現状を知らないとなーもでけまへん。政府発表のデータはかなり恣意的なものが多いですから、こっちも知識を浸けて置かないと、ころっと騙されちゃいますよ。

不平等社会日本―さよなら総中流
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田中角栄と国土建設

2006-12-13
田中角栄と国土建設―「列島改造論」を越えて



結局、高速道路は赤字になろうが何だろうが、11500キロの全線作ってるわけですが、この予定路線は田中角栄の日本列島改造論に書いてあった、高速道路路線図に基づいたもんであります。また、最近よく摘発される談合も、角栄が築きあげた、官の敷いた計画を、政が業者に漏らし、その情報を基に民が入札する。で、官と政は民にたかる。といった構造になってます。80年代のアメリカの要請によるベラボウな公共投資が始まって以来、税金によるコンクリート投資の暴走は全く止まりません。
 因みに、2013年までにはリニアモーターカーの山梨実験線の全線建設を終える予定になってまして、今の整備新幹線建設に次ぐような大規模路線建設がなし崩しで始まってます。
 で、大規模建設工事は周知の通り未だに談合の温床になってまして、一部の企業・政治家・官僚が税金を食い物にする仕組みになってますが、だけでなくって、東京の富を地方に移転する仕組み、富の再分配の構造としての公共投資、という性格も併せ持ってます。東京は消費に異常に偏った場所ですから、電力・水・食糧を供給している地方に対しての富の再分配は当然必要なのですが、建設投資以外で東京の富を地方に分配する方法は日本ではほとんど成立していません。現在、東京とそれ以外の地方部の格差は非常に広がってきています。んで、人口減少による経済圏の縮小・職自体の消滅などから、必死に働いてるのに生活保護以下の収入しか得られないワーキングプアという状態に陥っている人の存在は相当なものです。
 戦後経済は、無限の成長という幻想の下、自然・時間という外部経済を食い物にすることで発展してきました。今や誰もが無限の発展など在りはしない事は承知していますが、現在の構造から利益を引き出している層は目先の利益の為に永遠の経済発展をお題目にして、既得権益の確保(大規模公共工事の実施)に走っています。このままで良いと考えている人は、既得権益を漁っている人達以外には、いないでしょう。では、今後どういった方向に進んだらよいのか?新しい方向を探るには、過去も現在も知らないといけません。今の政治経済の基礎を作った田中角栄と国土開発の流れを知るには手頃な本です。
 
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王道楽土の戦争

2006-12-06
王道楽土の戦争 戦後60年篇


現像しながら読んでました。筆者の体験(水俣・三里塚とかとかとか)に支えられた直感とそれを結びつける資料で、縦横無尽・奇想天外に古代から現在まで日本の歴史を走り回ります。偽国満州から戦後日本経済へのダイレクトな結びつき、バブル狂宴からコイズミに到った日本への観察記事、とまあ歴史をあっちこっちと飛び回りながら頁は進むぅ、べべんべん、ってなもんで、こーいう読み物チックな書き方もってのも面白いもんです。でも本の中身・方向性はぶれません、結構目から鱗なコトが載ってる?かも?
 ワタクシ的には、個人情報保護法・住基ネットが稼動し、国家が個人情報を好きなように利用でき、かつ、格差が広がり下層やらニートやら、なんつーものも出現している今の日本を「電子封建制」ってんだ、と言い切るところ、いいっすなあ。
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日本史の中の天皇

2006-12-04
日本史の中の天皇―宗教学から見た天皇制


玉串料、新嘗祭等の儀式への各自治体予算からの出費に対して違憲裁判が起こされる理由、政教分離を定めた憲法が在る中で、宗教的存在である天皇を国の中の何処にどう位置付けるのか、等、天皇に関しては色々問題が多々ありますが、この本は天皇に関してコンパクトにまとまった入門書で、天皇が日本の歴史の中でどのような位置を占めてきたのかを古代から現代まで概説している本です。

1、大王から天皇へ
  最初の日本人、古墳と王権
2、天神地祇の神話
  高天原の神々、国譲り・天孫降臨・神武東征
3、祭司王・天皇
  大陸文化と「天皇」、祭司王権の成立、鎮魂祭・新嘗祭・大嘗祭
4、三種の神器
  八尺鏡と伊勢神宮・賢所、草薙剣と八尺瓊勾玉
5、皇室と仏教
  天皇の仏葬と宮中の仏教儀礼、皇室と寺院・僧尼
6、中世・近世の天皇
  武家政権と天皇、江戸時代の天皇
7、王政復古と皇室祭祀
  明治維新と皇室祭祀、記紀神話と皇室の祭り、小祭と儀式
8、現人神天皇
  帝国憲法と皇室典範、皇室法規・皇室財産・宮内省、即位礼と大喪礼
9、身分制度と公式制度
  皇族・華族と位階勲等、詔勅と公式制度
10、現代社会と皇室
  象徴天皇、皇室典範の問題点、皇室の現在と将来

基本的には儀礼の体系として祭祀権を握り続けており、時代によってそれに政治・軍事権がくっつけられたりしたのが判ります。今は一応象徴天皇制ですが、批判するのも自由という民主的な状況でなく、皇室外交等の政治的な役割の復活が目立っているのが現状であり、また、皇室によって日本人の国家観や文化観の枠付けをしようとする傾向も強まっている。なぜ日本において、このような現象が起きているのか? 考えてみる必要があるでしょう。
 
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日本の景観

2006-12-02
日本の景観―ふるさとの原型


日本の景観について、盆地・谷・山・原に分け、それらの持つ特徴を論じ、日本人が、懐かしいと感じる風景、美しいと感じる風景、とはどのような風景なのかを論じております。私が撮影の過程で、ひたすら見てきた日本の風景への印象と重なる所もあり、面白く読みました。日本の山村の典型的風景である、山の辺の風景(山の麓に山を背に、平地を前にした集落)について、日本人の心理的要因から、そういった場所に好んで居住してきた、という点には?です。まあ、そういう点もあるでしょうが。でも、都市住民は兎も角、普通の野山に住む上では水や薪の採取、日光の当たり方、田畑へのアクセスの良さ、といった要因が絡まりあい、その土地での生活条件にふさわしい居住地が決定されてきたものだと思います。
 ただ、日本全国がミニ東京になっている今、東京に成れない地方の街はどうあるべきか?と考える際に、「生きられる景観とは、場所あるいは土地にかくされた固有の特性を発見し、それを創造的に人間生活に組み入れることによる成り立つものである」との指摘は全くその通りだと思います。徒に東京の真似をしても、東京から人が呼べるわけではないですから、タダの真似なら本物のほうが良いに決まってます。土地によって異なる独自性を如何に確立し、またその魅力を如何に発信していくか?でしょう。
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麦の穂を揺らす風

2006-12-01
イギリスの巨匠ケン・ローチが今年のカンヌパルムドールを獲った作品で、アイルランド紛争を舞台にして戦争を真っ正面から撮った優れた映画です。  アメリカのバカな戦争映画のように安易に善悪を区別し、派手な戦闘シーンで観る者をフィルムの中に感情移入させる手段をとらず、戦争によって英雄は生まれない、主張の違いが政治に利用され、それが殺人に繋がり、殺人がまた別の殺人を呼び、そうして憎しみの連鎖が延々と続いていく「戦争」という政治劇を、リアリズムに撤し、登場する人間に寄り添った目線で描きだします。人を殺す絶対正義などは存在しない。正義を利用する政治があるだけです。映画では、解決策は提示されません、答えを提示しないことで見る者を現実について考えざるを得ない立場に追い込みます。  911→アフガン・イラク戦争と続く流れに応答した、マヌエル・ド・オリヴェイラ監督の「永遠の語らい」、テオ・アンゲロプロスの「エレニの旅」と並ぶような、素晴らしい映画です。是非一見をお薦めします。 →公式HP
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神話と日本人の心

2006-11-30
神話と日本人の心

日向と出雲、どっちも神話の里として宣伝していて、どっちが本家なのかしら?という疑問と、河合隼雄が書いた本ということで、興味が湧き読んでみました。
 結論から言えば、日本神話の特徴として中心に無為の神が存在し、その他の神々は部分的な対立や葛藤をお互いに感じ合いつつも、調和的な全体性を形成しているということで、それは、中心にある力や原理に従って統合されているのではなく、全体の均衡がうまくとれているのである。そこにあるのは論理的整合性ではなく、美的な調和感覚なのである。これを中空均衡構造とする。となっております。この点を、アマテラス、ツクヨミ、スサノヲ等の話を引きながら臨床心理家としての立場から検証しております。史学科卒業のくせに、古事記を読んだこともなく、神話はさっぱりなもので、日本神話(古事記・日本書紀)の概説としても読みました。出雲神話と日向での天孫降臨の別もちょっとわかりました。
 あいまいに全体的な調和を求める構造を神話をモチーフにして解明していくと言う点で、日本の心の成り立ちの古代からの連続性が感じ取れ、よかったです。
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雪舟への旅

2006-11-20
51452.jpg 山口県立美術館でやっている「雪舟への旅」展。帰る時の楽しみにしていたんです。雪舟はまだみたことがなかったので。来てよかったです。初期から後期まで概観できるようになっていて、さらに狩野派や横山大観による雪舟の模写も展示されいたので、雪舟が荒々しく大胆に描いた風景が、模写された時代によって和やかに→和的になっていくのがわかり、優れた美術作品は時代の空気をきちっと反映しているものである、ことを確認しました。彼が生きた、応仁の乱という戦争が日常的になっている時代の中で、水墨画の表現も必然的に大胆な線使い、濃淡のメリハリ、全体として武的なものになったと思われます。
 雪舟本人は中国に留学し本場の水墨画を学び、また、中国の風土が生んだ水墨画を感じ、そのあと日彦山や大分に滞在していたことから耶馬溪なんかで奇岩がそそり立つ山水の荒々しい風景描写をしていた中で日本での水墨画を成立させようとしたんだと思います。
 水墨画という限られたモチーフの中で如何に自分を出しながら顧客の要望に答えるか?小さな和紙の中には描かれた力強く、大胆で、静謐な風景がその答えであると思います。
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国立美術館巡回展

2006-11-19
51363.jpg 久留米の石橋美術館で開催されている国立美術館巡回展。日本の洋画の歴史をざっと概観する事ができる展示内容でした。坂本繁二郎と吉原治良の作品が個人的に気に入りました。黒田清輝や安井曽太郎なんかはさすがにうまいですね。
 洋画全体としては、欧州の絵画の流れを形だけパクッって日本の画題で描いたものが多かったです、模倣から入るのは当然ですが、そこから一歩進んで技法を自分のものにし、自分独自の絵を描くといった当然のことがなされていない、逆にそういうことをした人は非常に目立つ、という印象です。 
 石橋美術館はフブリジストン創業者石橋正二郎が久留米市に寄贈した施設ですが、コンパクトにまたまった気持ちの良い建物空間でした。トヨタのように儲かった金を溜め込んで自慢するよりも、広く社会に還元する行為が日本にももっと広がって欲しいものです。
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父親たちの星条旗

2006-11-02
鹿児島のシネマ与次郎で見ました。硫黄島の戦いを撮った映画です。硫黄島で撮られた一枚の写真、擂鉢山の上に星条旗を掲げた写真、その写真に写った兵士を太平洋戦争の「英雄」として戦争国債の購入の為に利用する国、利用される兵士達の葛藤、硫黄島での無茶苦茶な戦闘状況、旗を揚げた兵士達の後日談、といった映画です。硫黄島のテーマでアメリカと日本の両側から各一本撮っているので、日本側の方の映画も見たいですね。良くも悪くもアメリカ映画でしょう。別段、戦争をリアルにCGを使って再現する事で、逆に想像力を制限している、なんてことは言いません。万能な表現はありませんから。何かを選択すれば、何かを捨てないといけないのですから。戦争をリアルに描く事で、戦争の無意味性や悲惨さ、国家って何?なんかを主張できていると思いますから。ただ、兵士は国家の為に戦ったのではなく、戦友の為に戦ったのだ、という台詞には非常に違和感を覚えました。確かに戦争という異常な状況が日常となっている時には、その異常な日常の中での人間関係がさらに強調されて記憶に残ってるでしょうが、個人の記憶でなく、一本の映画でもって表現する時に、それと同レベルの結論に持っていくのは違うはづです。なんといっても戦争は国家が行うものであって、その国家が行う戦争の中で兵士が徴用され、戦っているのですから。
 
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山猫

2006-10-07
47698.jpg ヴィスコンティ監督の傑作「山猫」。イタリア統一戦争の最中、シチリアを代々統治してきたサリーナ公爵家を舞台にして、貴族時代の終焉と、市民社会の始まり、を描いています。サリーナ公爵を演じるバート・ランカスターの演技が素晴らしい。滅びに向かっていく孤高の貴族を貫禄十分に演じきっています。また、監督自身が元貴族だけあって、貴族の生活のデティールが見事に再現されています。先祖の肖像画に埋め尽くされた壁、使われること無く朽ち果てている部屋、豪華絢爛たる舞踏会、一般庶民とはかけ離れた貴族の生活の再現はさすがです。またカメラワークがそれをキチンと押さえています。3時間の大作ですが、ちっとも長くない。
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雨月物語

2006-09-30
47029.jpg 上田秋成原作の怪奇談を溝口健二監督が映画化した名作。1953年の作。百姓の戦に対するリアリティが素晴らしい。ちっとも整然とした兵隊でなく、腹が減れば押し込み強盗をし、綺麗な女がいれば強姦し、欲望のおもむくままに行動する兵隊。野武士側の視点で描いていた黒沢明の七人の侍とは対になるような映画で、庶民の立場から戦争や生き方を描いています。衣装の豪華さ、流れるカメラ、光の使い方、白黒を生かした幻想的な画面は観る者を魅了します。自分の美意識を入れる箱としての時代劇でなく、舞台となる時代をしっかと見据え、かつ作った時代についての映画にもなっている。名作です。
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鉄西区

2006-09-26
中国の長編ドキュメンタリー。工場ーRUST、街ーREMNANTS、鉄路ーRAILSの3部から成る全9時間5分。見終わって一つの巨大な塊を通り抜けたような感じがあります。確かにえらい長くて、見るのに覚悟がいりますが、見て損の無い傑作です。というか是非見るべき作品です。
 作品の舞台は瀋陽の街の工業地帯・鉄西区。かつて日本が武器製造の為に作った工場地帯にソ連がドイツから撤収した機械類を援助し、一時期は100万人もの労働者が働く大工場地帯だったのが、改革開放から一転して破産が続出し、今では工場地帯そのものが存亡の危機となっている場所です。
 一部では倒産していく大工場の労働者を追い。第二部では企業城下町での生活を若者を中心として、住宅の取り壊しと集合住宅への移転が進められていく中で、より良い移転条件を求めて電気・水道が止められた家に住み続ける人々を追い。3部では鉄西区を走っている鉄道と鉄道敷地内に住み着いている親子の生活を追い。ほとんどのシーンでカメラは被写体に寄り添って回り続けます。作者が積極的に関わり答えを引き出すのではなく、的確な構図でただひたすらに目の前の出来事を見つめ続ける事で、世界の、人間世界の、力強さ、豊穣な広がりを、被写体そのものに語らせるという手法で作品化することに成功しています。ペドロ・コスタの「ヴァンダの部屋」の兄弟作品のような存在でしょう。 
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ファイナル・ソリューション

2006-09-21
2002年にインドのグジャラート州で、ヒンドゥー教徒によってイスラム教徒の虐殺事件が起きました。イスラムの脅威とヒンドゥーナショナリズムを煽り、ムスリム排斥を唱えるインド人民党(BJP)の動き、犠牲者となったイスラム教徒のインタビュー、ヒンドゥー教徒のインタビュー、を通してグジャラート州の状況を映していきます。政治は票を集め権力を得る為に、宗教は信者を集めやはり権力を得る為に、政治と宗教がお互いを利用しながら一となり一つの価値観を推進し、異物を排斥し始める、この循環が始まり回転が早くなっていき、エスカレートしていくのは非常に恐ろしい。ユーゴでも、ルワンダでも、ダルフールでも、憎悪はどこからでも湧いてくる。また、BJPの州知事の下で、学校や住居でのイスラム排斥・隔離が公認政策として実行されているという事実には、まだ世界にはナチスのようなことをやっている人たちがいる、人間の変わらなさ、に暗澹とした気分になりました。
 ただ、映画としては長すぎ。半分でいいんじゃないのかな?ただ、映画の最初と最後、目の前でヒンドゥー教徒に家族を殺される様を見続けた少年の語りのシーンは非常に良かったです。

ドキュメンタリー・ドリームショー
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メランコリア 3つの部屋

2006-09-20
サンクトペテルスブルグのロシア士官学校、グローズヌイ(チェチェンの首都)、イングーシ共和国、の3箇所での子供達の様子を撮ったドキュメンタリーです。10歳からの少年が軍事教育を受けている様、彼らが学校に入る以前の境遇は路上生活者であったり、両親がアル中で子供の面倒を見切れなくなった、母子家庭で母親がチェチェンに行きおぶさんの家に預けられたが、結局士官学校に、といった具合です。戦争で廃墟だらけになったグローズヌイの風景は圧倒的です。戦争とはこういうものだ、と映像の全てが語っています。日本の報道に現れない戦争の真実。イングーシ共和国。イスラムを信仰する人達の静かな生活の中にもチェチェン戦争の足跡が刻まれいました。
 映画としては、まあまあ、って感じでしたが、ロシアに興味がある人や、戦場とはどういうところか、なんてことに興味がある人にはいいんじゃないでしょうか?

ドキュメンタリードリームショー 
公開日程は 9/23,10/18


チェチェン やめられない戦争


Stanley Greene: Open Wound: Chechnya, 1994-2003
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公共性

2006-09-19
公共性

公共性とはどういった考え方なのでしょう?
私ばかりが優先され公の意識が足りない、という類の言葉を年寄りや政治家なんかが口にするを度々聞きますが。そういった場合の公とは言えば、自分がいる場所を、同じ様な考え方を持った人ばかりがいる均質な場=国として考え、公=国家と見なしている場合が多いと思われます。そこから公益とは国益となり、公の為とは国の為、という図式がすぐに成立します。
ですが、公共とはこんなに狭いものなのでしょうか?公共とはもっと開かれたものであるはずです。世界に存在する一個人が社会の中に位置ずけられた肩書によってではなく、社会的肩書きの無い個人が本来の自分として在る時に、同様の個人と自らの意思で自由に交わることができる空間、それが公共である。この見解をアーレントとハーバーマスの批判的読解を中心にして整理していきます。
 社会にとって役に立とうが立つまいが、生まれてきた以上、その生そのものを絶対的に肯定する、そうした世界を構築するにはどのようにすれば良いのでしょう?
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水没の前に

2006-09-16
三峡ダム建設によってダムの底に沈む事になった街四川省奉節。この街の人々が移転する様を丹念に追ったドキュメンタリー映画です。日を追って壊されていく街の有様、政府との交渉で一元でもおおく補償金をせしめようとする住人、もう水が迫って来ているのに移転先の家が無く水没予定地に留まり続ける人々、壊した家から鉄筋やらの金属を回収して儲けようとする旧住民。日本で多く報道される上海等の沿海州の繁栄振りとは全く違う、内陸部の田舎街奉節での生活の実感が生き生きと捉えられています。取り立てて事件が起こる映画ではないのですが、生活の細部をきっちりと押さえた映像には、観る者を魅了する映画として大事な何かがしっかりとあります。非常にいい映画です。

ドキュメンタリードリームショー 山形in東京2006にて9/29、10/20の後二回上映します。

監督インタビュー
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ゆきゆきて神軍

2006-09-14
45501.jpg やっと見ました。原一男監督のドキュメンタリー映画「ゆきゆきて神軍」。
天皇ヒロヒトにゴムパチンコを撃って1年半の実刑をくらった奥崎謙三が、ウェワク残留隊で隊長によって終戦後23日もたってから部下射殺事件があったことを知り、奥崎は遺族と共に真相究明にのりだす過程を執拗に追った映画です。奥崎の個性が強烈なのでそれに引っ張られて映画がどんどん進んでいきます。「田中角栄を殺せ」と大書してある看板を載せた車に乗って、当時の部隊員の家に押し掛け、何故殺したのかを問い詰め続け、次第に現地で当時何が起こっていたのか?を明らかにしていきます。敵に投降するより自死を選べ、というお題目を刷り込まれた兵隊達が餓死状態に追い込まれた末にどういう行動をとったのか?これは87年に撮られた映画ですが、観る者を惹きつけるいい映画です。蟻の兵隊も似たような映画ですが、こちらの映画の方が完成度は数段高いです。色々な意味で人間というものを考えるような、映画です。
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国宝 信貴山縁起絵巻

2006-09-07
44893.jpg 石川県立美術館で信貴山縁起絵巻が3巻纏めて全部公開しているというので、行ってきました。先日京都の国博で見た大絵巻展が面白かったので。今回は絵巻の一部分だけ開いて展示してあるのではなく、3巻(飛倉・延喜加持・尼公)とも、全てを公開しているので右から左に徐々に巻きながら見ていく絵巻本来の見方に近い見方が出来ました。全部見ることが出来るので本編の流れが判るのが面白いのは当然ですが、描き込まれている当時の貴族、庶民の暮らし振りがなんとも興味深いです。それにしても、平安時代に描かれた物が未だに色褪せないというのは、ホントに驚異的です。

9月24日まで。
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金沢21世紀美術館

2006-09-07
44891.jpg 金沢に新しくできた現代美術専門の美術館です。今は展示替でコレクション展しか見れないのですが、非常に面白かったです。何よりも美術館が元々持っている力がかなり強いです。妹島和代と西島立衛の建築が非常に面白い。全面ガラス張りの筒に天井高の違う四角い展示室をはめ込んでいった、という作りで、展示室ごとに天井高の違うので空間の雰囲気が全く違っているということがすごい新鮮でした。常設展示のジェームスタレル(真っ白の部屋の天井にガラス無しの四角い天窓がある空間)が何時も無料で見れるというのも、作品の意図と合っていて良いです。人がいっぱいいて盛況でした。場所が香林坊に近く、中が透けて見えるので、美術館特有の偉そうな雰囲気が皆無というのもあるのではないのでしょうか?これだけ質が高い箱モノは珍しいと思います。外見に負けない企画を立てるべく頑張って戴きたいと思います。

金沢21世紀美術館公式HP
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おくの細道

2006-08-24
芭蕉 おくのほそ道―付・曾良旅日記、奥細道菅菰抄


言わずと知れた古典、松尾芭蕉のおくの細道。読んでビックリかなり短い、この文庫版では71頁しかありません。中身は紀行文と俳句で構成されていますが、俳句の芭蕉が書く文だけあって、リズム、語感、古典引用、ともう全文が研き抜かれた大吟醸のような、兎に角面白かったです。また古典の引用があまりに頻繁なのでそれも驚きです。万葉、古今などの和書は当然、中国の四書五経から文の表現のあちこちにすんなりとごく普通に引用されてまして、自分のスタイルを極めようとする人の努力の仕方の一端をみたような気が致しました。
 
 月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして、旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。予もいずれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂白の思ひやまず、
 
 作品に対する熱情が歌枕を訪ねるための東北・北陸の旅へと彼を向かわせます、江戸にいれば門人に囲まれ安逸な生活が保障されているにもかかわらず。アンゲロプロスが旅は我が家、と言うのや、E.W.サイードが一つ所に安住せずに常に異邦人・旅人で在り続ける事、などと言っているのと相通ずる点を感じました。何事かを表現しようと世と格闘する人の基本姿勢のような物を考えました。いやしかし、面白いです、短いですし、軽く読めておくが深いのでかなりお薦めの一冊です。
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紙谷悦子の青春

2006-08-18
前作「父と暮らせば」を撮った黒木和雄監督の遺作となった最新作です。戦争末期の鹿児島でのある家族の日常生活を丹念に描く事で、死が隣り合わせに日常の中の組み込まれている状況が炙り出されています。主人公紙谷悦子の結婚が軸になり話が進んでいきます。紙谷悦子の兄夫婦とのやり取り、婚約者とのやり取り、はかなり笑えます。日常の中にある可笑しみをきっちりと描き、映画に仕上げているのは流石の仕事です。突拍子もない出来事が起こらない日常を描く視点を持つことは、観察者が日常の中にありつつ、そこから距離をとってそこを見つめる、ということをしないといけませんが、それが出来るようになるのは、結構難しいものです。
 笑えて、しんみり出来て、後に反復して楽しむ事ができる、いい映画です。夏休みにぜひどうぞ。

岩波ホールで公開中です。
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法隆寺宝物館

2006-07-26
41553.jpg 明治時代に法隆寺から皇室に奉納された法隆寺の宝物300点あまりが東京国立博物館の一角の専用施設に常設展示されています。若冲をみた後、看板を見つけて寄ってみたのですが、行って、見て、ぶったまげました。去年からの全国撮影のついでに各地の美術館にちょこちょこ行ってますが、この法隆寺宝物館は展示品の質・量ともに、他を圧倒的に突き放しています。一階の展示室の仏像ルーム。入り口を入ると、高さ30センチ程の小さな天平仏がスポットライトを浴びて暗い部屋の中に一体一体浮かび上がっているのが、いきなり目に入ってきて、一気に宝物館の瞑想的な空間に引き込まれます。二階も同様です。展示物の全てが飛鳥時代(7世紀)の仏像・仏具・伎楽面・調度品・書蹟などで、重文、国宝に指定されていない展示品はありません。しかも、全てが常設展示→安いです。
 外の箱を作る段階で中に入る物が決まっていて、灯りも、展示ケースも、内装も、専用に作ってあり、こんな贅沢な博物館は日本には他にないと思います。宝物館を設計した谷口吉男は「日本のルーブルを作りたい」と言っていたそうです。ルーブルには行ったことはないですが、まさしく、日本にとってそのような存在だ、と言い得る稀有な博物館だと思います。1999年に完成した施設です。

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若冲と江戸絵画展

2006-07-26
41551.jpg アメリカの石油富豪プライスさんが集めた、伊藤若冲を目玉とした江戸絵画のコレクション展です。若冲と言う人は京都の総菜屋の若旦那でしたが、40歳を機に脱サラ?して、絵の道に入った人です。絵師として注文絵画をこなすのではなくて、自分の為に絵を描くと決めて、それを貫いたひとです。実際に展示を見ると、はっきりそれが判ります。江戸絵画コレクションなので、狩野派の絵画なんかも展示してあるのですが、展示してある絵の多くは、絵を買える商家や武家の床の間に季節毎に取り替えながら飾る為の絵、というものが圧倒的に多かったです。売る為に画面のなかにモチーフを描いているだけ、という絵です。しかし、若冲の絵は違います。一枚一枚がはっきりと生命を持っていました。かなりの点数が出ているのですが、圧巻は鳥獣花木図屏風です(私は涅槃図の若冲バージョンだと思うのですが)。6曲1双の屏風絵全てを升目で区切り、その升目の一つ一つの色を微妙に描き分けながら涅槃図全体を描いてます。色使いといい、動物の表情といい、その手法といい、とにかく見ていて楽しくなる絵です。また鶴図屏風も墨のトーン、筆使い、動きの捉え方、なんちゅっても素晴らしいです。この2作品を見るだけでも、行く価値が大有りです。
 また、ガラス無しに絵を直接見れるコーナーもあり、絵を江戸期当時の屋内に飾ってあるような感じで見ることができるので、面白いです。

東京国立博物館で8月27日まで開催されています。
2006/9/23〜11/5  京都国立近代美術館
2007/1/1〜2/25  九州国立博物館
2007/4/13〜6/10  愛知県美術館
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蟻の兵隊

2006-07-25
戦後、山西省に駐留していた日本軍が武装解除せずにそのまま居残り、国民党軍閥の閻灼山の軍隊に混じって2年間戦闘を継続した、という事実があります。それは当時の司令官の命令(天皇の軍隊が再度中国に攻め入る為の布石として日本に帰らず、中国にそのまま居残るよう命じたもの)であったが、2年後日本に帰ってみると、兵隊が自主判断で残ったのであり日本軍とは関係ないとされ、彼らの行為が正統な命令に基づいたものである、ということが否定されました。
 映画は、この兵隊の一人であった主人公を追っています。日本兵として中国人を殺した事。他の日本兵が中国人を強姦する見張りをした事。行動を同じくしていた兵隊が自分が中国人を殺したことを忘れていた事。やはり、中国に向かった主人公と現地の中国人との会話の部分がいいと思います。なぜ、反日運動があれだけ広範囲に起こったのか? 中国でじさま、や、ばさま、に思い出話を聞けば日本人に殺された、強姦された、という話が普通に出てくる現実がある、ということです。この事実を無視して、国家統制された社会主義国だから簡単に人を動員できる、というのはどうなんでしょう? さらに、日本は原爆を投下された被害者という面は一部で、私たちのじさまにはアジア全域で人殺しをした人がいっぱいいるということです。→日本鬼子
 ただし、映画としてみた場合は?です。映像が非常に雑で、作品にするという意識が足りなすぎると思います。事実を追っていればドキュメンタリー、記録していればドキュメンタリー、という意識でなく、もっと映像を突き詰めるべきでしょう。内容があれば、形式はどうでもよいという意識で作られていたのが残念です。あと、音が五月蝿すぎました。
 公式HPへ
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ヒロシマ2005 60年目のヒロシマ

2006-07-24
41402.jpg 土田ヒロミのヒロシマシリーズの最新作です。今まで、「ヒロシマ1945−1979」で原爆の子に被爆体験を書いた子供の35年後の姿を撮り、「ヒロシマ・モニュメント」で原爆投下時から広島市内に残っている場所を80年代と90年代に撮り、「ヒロシマコレクション」では平和記念館に収蔵されている被爆品を撮りました。その作者が今回は原爆の子のその後、と2005年の8月6日の平和公園の様子のカラースナップが一緒になって展示されています。被爆者の60年の重みと平和集会の軽さ、その両相の対比が現代を炙り出している、そういう写真です。被爆者という存在に長年関わり続けることで、やっと表現できる、そういう写真です。

銀座ニコンサロン 7/24 (月)〜8/5 (土)
大阪ニコンサロン 9/14〜9/26
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暴力

2006-07-22
暴力

先だっての暴力の哲学と同じ様な中身の本です。こちらの方が難しい言葉をなるたけ使わないで、全体的に判り易く書いてあります。
 まず、暴力を二つに分けます。無法な力として定義するviolence、そのviolenceを他者に対して発動することを正当化している法=権力までを含む定義としてのドイツ語のGewaltの二つです。主に後者の(Gewaltとしての)暴力とはどのような機能であるのか?
 最初に、世界を二つに分けます。自分がいる場所と(a)、自分がいない場所(b)
です。自分がいる場所には、自分が同じ仲間だと思っている人々がいます。自分がいない場所には、自分とは関係ない人々がいます。お互いに違う仕組みで共同体を運営している場合で、aとbに対立が生じた時、両者ともに自らの仕組みをもう一方に押し付けようとする力。またaの内部で主流ではない意見(a1)が出された場合に強制力を持って意見をaに統一させようとする力。それがGewaltという暴力になります。
 ここで、根本的な疑問として、他者に対してGewaltを発動する元となっている権威はどこから発しているのか?突き詰めていけば、根拠はないんです。多くの人がその権威を信じているから存在している、という水掛け論になってしまいます。
 では、そもそも発動の根拠さえあやふやな暴力を発動させないで物事を解決するにはどのような手段がありえるのか?やはり話し合いにしか存在しないのではないでしょうか?
 という内容です。まあ、阿呆な私の略ですから、是非とも一読いただければ幸いです。
 
 
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ルーヴル美術館展 

2006-07-21
東京藝術大学美術館でやってるルーヴル美術館展。大理石のギリシャ彫刻、ギリシャ神話をモチーフにした陶器や素焼きの像なんかの展示です。展示を見ていて先日大原美術館で見たガンダーラ彫刻や日本の仏像に繋がるような何か、を感じました。距離的にはるかに離れている場所であっても、お互いに影響があったんだろうし、人間のやることなんてなぁそんなに変わるもんじゃないいんだなと思います。ギリシャ正教でもイスラムでも仏教でも、理解不能な特殊な存在でなくって、お互いに似たような存在なんだ、というのを美術品を通じて考えてみる、なんて如何でしょう?

ルーヴル美術館公式サイト
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暴力の哲学

2006-07-13
暴力の哲学

「暴力」という言葉は、私的には、肉体に直接他者から下される腕力というような印象が強くあります。が、この本ではそうした直接的なものだけでなく、政治的な暴力、アメリカの黒人差別等、を主に扱っております。
 オウム真理教や北朝鮮、殺人事件の犯人のような例に見られるように、次から次へと見出される敵は、政治と結託したメディアや、嫌いという先入感情でもって対象への理解を放棄した世間、などによって交渉不可能な絶対的な異分子へと祭り上げられ、それに対する不寛容は増幅されている。そうなると自分が一定の集団の中で異分子=敵として認識されないよう、一旦敵として公認されてしまった相手に対して理解しようとする姿勢は益々なくなっていく、本当に悪循環です。
 法によって認められた暴力を独占している国家は、国境の向こう側に対する国民の恐怖という感情に立って暴力の保持を正当化していますが、国の存在が曖昧に相対的になっているいま、国家暴力が立脚している地点が国境の向こう側への恐怖から国民相互への不信感からくる不安へと、より軽い感情にシフトしているようです。
 国家や多数を占める者によって独占された力=暴力が、いかにしてそこに住む国民や(政治的)少数派に対して行使されるのか?また暴力に対抗する非暴力・反暴力とはいかなる態度なのでしょう?
 
 
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母たちの村

2006-07-08
アフリカ映画です。今までアフリカ映画は見たこと無かったので見てきました。アフリカの農村で女性の割礼を巡って起こる出来事を描いてます。未だに家父長制が絶対的である農村部で女性が男性的伝統に逆う事の大変さ、というものがよっくわかります。この家父長制の存在は石原とか安部とか麻生が大喜びしそうなほど、絶対的であるし、去勢されていない自然環境の中で呪術的なモノが未だに生きている状況もあるし、これだけ全く違った社会が世界の中にはまだいっぱいあるんだろうなあ、なんて思いました。
 アフリカの日常生活を知ることができて、興味深い映画だと思います。

公式HPはこちら。
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日本奥地紀行

2006-07-05
日本奥地紀行


1878年にイギリス人女性のイザベラ・バードが東京から東北、北海道を4ヶ月間に渡って旅行しました、その時妹宛に出した手紙を元にして書かれた旅行記です。1867年が維新ですから、まだ徳川幕府から明治政府に変わった直後のことです。明治政府が積極的に展開していく西洋文明(技術)の導入(小森陽一が言うところの自己植民地化)はまだ東京に於いてほんの少し始まったばかりで、著者が旅した地域は全く江戸期のままのような状態にありました。こうした時代に西洋の白人女性という全くの異星人が日本の奥地に入り、その生活や風景を見事な筆致で記録しています。特に北海道に入ってからのアイヌの生活についての記述はかなり読ませてくれる部分です。当時の西洋人のキリスト教+技術絶対の考え方でもって全てを判断している部分が多少五月蝿くはありますが、それも含めて、たったの150年前で、今とは全く違う日本の姿を教えてくれる非常に面白い本です。
 東京、日光、津川、新潟、米沢、山形、新庄、湯沢、久保田、大館、碇ヶ関、黒石、青森、函館、森、室蘭、白老、苫小牧、平取、門別、室蘭、礼文華、長万部、函館、東京、という旅程です。去年の夏私が北海道・東北撮影に行った時とほぼ同じ所に行っているので(未だアップしてませんが・・・)、自分と同じ場所で同じ様な感想を持っていたり、風景の移り変わりの比較ができたりと非常に面白かったです。
 日本人は非常に子供をかわいがる、とよく書いていますが、これは母性という神話でバダンテールが語ったように、当時の西洋社会では子供を自分で育てるということがなかったので、それが筆者にとって珍しい光景であったからかしら?
 
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引越し手伝い@北区

2006-06-25
39049.jpg システムを構成しているのか?を掴むやり方、があるのだと思います。世界を把握していく上では当然どちらも大切です。大きな世界と小さな世界、どちらが自分の性にあっているのか?で初めに進む方向は決まると思いますが、最終的に辿りつく所は、同じ様な地平になるのでしょう。映画で言えば、大きな世界のアンゲロプロス、と小さな世界のケン・ローチのように。
今日は引越し手伝いに、都内まで車をのっていきました。久々に首都高を使って、用賀から護国寺まで、やっぱ高速は快適快適。
 引越しの相手はフリーのテレビディレクターの方、四畳半風呂なし貧乏アパートから、2K風呂トイレ別の快適アパートに成り上がりました。北区内でアトレー2往復、荷物はほとんどなかったっす。
 私もイイトコに住めるよう、ガンバんないと


今日のトーテミスム
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アフリカン・リミックス

2006-06-14
アフリカの現代美術を集めた展覧会です。大陸中がヨーロッパの植民地であった過去、ヨーロッパからの独立後も戦争や地域紛争が絶えない現在。
 植民地は植民帝国本国から、独立する為の考え方を学び、それを基として自国の国民意識を育て上げ、独立へと導いていったのですが、その後に起こったのは、植民帝国本国と結びついた独裁政権による経済的な植民地化、と、豊富な天然資源の利権を巡っての泥沼の紛争、と暗い歴史と憂鬱な現在を抱えています。
 そうした時間を背景として、アフリカ人であることとはどういうことなのか?アフリカの現状と土着的なモノとの関係。アフリカ以外の世界との関係性。なんてことがインスタレーション、ビデオ、写真、絵画、なんかで表現されています。カルティエコレクションに出品していた人もいました。
 作品の基調は原色を大胆に使うアフリカっぽい色調、や、デザインなんかが楽しい展示です。

森美術館で8月いっぱい。
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想像の共同体

2006-06-11
想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行


国家やナショナリズムといったものを考えるに当たっての、古典とも言える重要な一冊です。そもそも、一つのまとまりとして国家が成立できたのはなぜなのか?地図に引いてある境界線が国家の範囲となっていますが、そもそも、どうして、その場所に境界が設定され、また境界によって住民の属性が異なってくるようになったのは、何時からなのか?
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在日米軍

2006-06-10
在日米軍


相模原市に米国陸軍第一軍団司令部が移転してくるそうで。陸軍第一軍団は北朝鮮からアラビア半島までを管轄する陸軍です。横須賀が母港になっている第7艦隊が極東の安定の為に存在しているのではなくて、第一陸軍と同じ様な範囲と太平洋ををカバーしています。今、日本にいる米軍は海軍・海兵隊・空軍、であって、陸軍はいないんです。今度来るのは、戦争の指揮をする司令部です。ということは、安保条約に基づいて、日本の安全を守ると言う名目で日本に米軍基地を保持し続けていますが、日本の安全を守る(一応法律の上では、そうなっています)兵力は保持していないので、太平洋からアラビア半島までの広大な地域に軍隊を派遣する為の最前線基地にすぎない、ということです。
というようなコトが判り易く書いてあります。
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ナショナリズム

2006-06-08
ナショナリズム


「愛国心を涵養し」、というのは教育基本法の民主党改正案です。ここでいう愛国とは一体どのような態度なのでしょうか?昨今、よく?メディアに登場するよになった、愛国心(ナショナリズムともパトリオティズムともいいますが)、どのような概念なのでしょうか?
 明治維新で一気に上からの近代改革を達成し、日本がアジアにおける後発の帝国へと突き進んでいった時、明治政府は、江戸期から日本に住んでいた民を、天皇=国体の下に帝国臣民として変容させ、また、大日本帝国として一つの国に纏め上げていきました。明治になって登場してきた日本と言う国は、その成立に際しての基本的な考え方はそのようなものなのか? また、常に帝国の中心であった天皇と共にあり、敗戦時にこれだけは守りたいとされた、「国体」という概念とは一体なんなのか?戦前からの国体的思想と現在の愛国ブームとの関係性はあるのか? といったムズカシメの内容をコンパクトに纏めております。
 靖国神社参拝問題なんかを考える上でも、この本の中身を知っていたりすると、よりよく理解できるようになるんじゃあないでしょうか。
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カルティエ現代美術財団コレクション展

2006-06-07
400年の時を一気に越えて、現代美術の展覧会です。カルティエの芸術財団が20年に渡って集めてきた現代美術作品から、選んで展示しています。
 近代以前には、美術品は貴族や一部の商人の為のものでした。また、写真が誕生する以前には現実(肖像画、風景画、彫刻)を如何に再現するか、が主目的でした。そして、製作者とモデルの間の個人的な関係が作品に反映されていました。
 一方、鑑賞者が不特定多数であり、単に現実を再現する、というのは機能はフィルム(止まった写真・動く映像)等の専売になっている現代では、個人と世界の関係性を表現したり、世界の捉え方を間接的に表現したり、はたまた、現代を皮肉ったりと、複雑になる一方の社会を?どうやって表現するのか?に苦闘してきました。
 現代美術って、よくわからない!という方は結構いると思いますが、この展示は各作品の質が高く、表現の幅も広い展示なので、色んな方が気軽に楽しめる展示だと思います。

東京都現代美術館で7月2日まで。
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プラド美術館展

2006-06-07
37334.jpg スペインはプラド美術館から、81点絵が来ています。エル・グレコ、スルバラン、ベラスケス、ムリーリョ、ティツアーノ、ルーベンス、ファン・ダイク、テニールス、ティエポロで勿論ゴヤ、と、有名人が次から次へとこれでもか!っと出てくる豪勢な展示です。
 今回見た中で、スルバランのボテコン(静物画)が一番恐かったです。テーブルに置かれた、食器等が4つ描かれているだけなのですが・・・ 物が存在し、またそれを布の上に油に溶かした顔料でもって再現する、その結果として画家の現実に対する認識が自然と現れてくるのですが。在ることの孤独、とでも言いましょうか、(セザンヌの林檎のような)、物がモノとして存在してしまうことの壮絶さが、画面から溢れてきて観る者を串刺しにします。
 ゴヤは勿論、良かったですよ。魔女の飛翔はスルバランと同じく黒い背景なのですが、スルバランの黒はは虚無に吸い込んでいくような、そんな一面の漆黒で、ゴヤの背景の黒は、魂の雄叫びが聞こえてくるような、そんなうねりのある黒でした。
 この展示は見に行く価値、大、です。お薦めです。

東京都美術館で7月2日まで。
その後、大阪市立美術館に巡回。
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家父長制と資本制

2006-05-30
家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平


この前読んだ、「母性という神話」に触発されて買った上野千鶴子の「家父長制と資本制」。さっき読み終わりました。あまりの情報量と、フェミニズムによる視点の確かさに圧倒されて、読了後しばしぼうっとしていました。
 家父長制、(男が女を構造的に支配・搾取している社会状況)、が成立してきた歴史的背景を詳述するのは勿論。資本によって成立した市場が、市場外要因である家庭を通して家事労働(日々の男=夫の労働力再生と子供の養育)を無償労働のままに留め置くことで母=女から労働を搾取し、また、通常労働力としての女も、男性労働力より劣る二流労働力として資本に利用されている、という現状について、非常に的確に指摘、理論化していました。どこをとっても無駄な部分の無い、刺激に満ち合ふれた本でした。
 簡単?に言えば、結婚前は社会の中で男より劣った労働力という地位に置かれ(今は多少変わってきましたが)、結婚後は家庭で家事・育児を行うのが当たり前というような常識は、近代の所産であって、男主体の資本制・家父長制に利用されているだけである。という視点でもって、社会批判を行っている本であります。 90年の本ですので、多少、この本が述べている点よりも進んでいる現在もありますが、現在を批判的に掴むための考え方を提供してくれます。
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隠された記憶

2006-05-25
ミヒャエル・ハネケ監督の新作です。主人公夫妻の元に彼らの家の正面を延々と撮ったビデオテープが届けられます、それは誰が?何故?という筋書きで話が進んでいきます。送られてきたビデオテープの視線、映画の中で主人公達を捉える視線、変化を抑えた静かなカメラワークが二つの視線のどちらを表しているのか? どちら側であっても、映像に変化が無いので、それが見る側の想像を刺激し、緊張感が途切れる事がありません。
 誰にでもある隠したい過去、人に対する厭らしい感情、日常生活の裏に潜むもの、を説明を排し、映像の力だけで語っています。結論を提示しないし、問題を投げっ放し、の映画ですが、観た後、観客の心のどこかに引っかかる物を残すという技を確実に持っているいい作品だと思います。
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母性という神話 

2006-05-23
母性という神話


女性が子供に対して抱く母性愛というものは、本能、なのか、それとも後天的なもの、なのか?母性というものが、近代と共に生まれた概念であって、女性に生まれつき備わっている本能というものではない、ということを様々な史料を基に論じていきます。17世紀にはもっとも貧しい階層を除く都市生活者は子供が生まれてすぐに里子に出すのが普通で、自分の家で育てることはほとんど無く、また里親の下での死亡率は非常に高かった。大抵、女性は社交界や権力の奪取には興味をそそられたのだが、自分の子供に対して無関心であった。
 
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ハーメルンの笛吹き男

2006-05-17
ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界


笛吹き男が鼠を退治したのに報酬を支払わない人々に腹を立て街の子供を連れ去った、というドイツのハーメルンの笛吹き男伝説。この本は史実から民衆伝説となったこの話をきっかけにして、ヨーロッパ中世が如何なる時代であって、またその時代の「普通」の人達はどういった生活をしていたのか?を一つ一つ丁寧に解きほぐし、当時の生活や、人々の暮らし振り、年表に記されている大文字の歴史事実と生活者との関係などを、読者の前に露わにしてくれます。相当前(1974)の本ですが、自分が眼にしていると思っている事実の裏や脇には全く違うような世界が数多く並立していることを指し示してくれる、十二分に刺激的な本です。古典とはそういうものですね。
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江戸の誘惑 肉筆浮世絵展

2006-05-13
34980.jpg ボストン美術館に収蔵されている肉筆浮世絵コレクションが1世紀ぶりに日本に帰ってきました。浮世絵が誕生した1600年代から幕末までの肉筆作品の名品がこれでもか、と並べてあります。線によらないで陰影によって対象を描く西洋画に対し、線の強弱と画面構成で描く浮世絵。多くの美人画、江戸風俗画を見ていると谷崎潤一郎が細雪で書いている世界を見ているように思えました。
 しかし、なんといっても白眉は葛飾北斎です。北斎の前に北斎無し、北斎の後に北斎無し。でしょう。刷ったものと違い、肉筆浮世絵を買うのは金のある商人や武家階層でしょうから、その顧客の意に沿うように、男の望む女や世間を描く絵師、がほとんどの中、世間に受け入れられる受けのいい絵でなく、自分の描きたい絵を90才になっても追求し、常に新しい境地に挑んでいく姿勢は、他の絵師にはみられません。
神戸市博物館で5月28日まで。
その後、名古屋ボストン美術館(6/17〜8/27)、江戸東京博物館(10/21〜12/10)に巡回します。
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大絵巻展

2006-05-12
34883.jpg 京都国立博物館でやっております、大絵巻展を見てきました。12世紀から17世紀までの描かれた絵巻がずらっと50本近く。壮観です。絵巻ですから、絵と詞で構成されていて、主題となっている寺の成り立ちや、戦争の成り行き、また全くの創作まで、全てがその当時の風俗を必然的に書き込んでいて、日本社会の変化が目で見て判り、非常に面白かったし、刺激的でした。鳥獣戯画は別格として、源氏物語絵巻のように細目鈎鼻で表情がわからない貴族の生活を描いた平安時代のものから、乞食や遊行の者達を書き込んでいる鎌倉・室町期の一遍上人絵伝、そしてまた江戸期に狩野派によって武家中心の生活だけが描かれたもの、と時代によってその時々の考え方が反映されていた、と思います。
 なにせ絵ですから、見ればわかりますし、非常にお薦めの展示です。ちょっと混みますが・・・・
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現代中国の美術

2006-05-01
33736.jpg 新潟市美術館で開催している、現代中国の美術展を見てきました。中国最大規模の公募展である全国美術展の入選作597点からさらに95点を選んで日本に持ってきています。高度経済成長の真っ只中の地域と、未だに封建近代が続いている農村部、そうした地域間のギャップや、世代間のギャップ、西洋と中国の関係性、を描いていたり、近代化していく中で変わっていく自然、と、変わらない情景を見つめ続けている絵や、人民解放軍の日常、中国が打ち上げたロケットを描いた物なんかもあって、今沸騰している中国の今が絵画を通じて見えてきます。変化の只中にある国や地域の表現は、表現者の心からの叫びのようなものが出易いと思うのですが、まさにこの展覧会はそういうモノだと思います。何故絵を描くのか?という、根本的な疑問に対しては、時代の熱を表現する、という視点でもって乗り切っている、と感じました。成熟した近代である日本・西欧ではこうした表現は難しいでしょうね。お薦めの面白い展覧会です。5/14まで。

巡回します。
日中友好会館に5/20〜7/2。福岡アジア美術館に9/16〜10/29
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私のいる場所

2006-04-22
東京都写真美術館でヨーロッパ、日本、韓国から私にまつわる写真などを集めた展示でした。ヨーロッパも日本も自分の身の回りのありふれた風景や身近な人を撮った、いわゆる私写真の展示がメインだったので、両地域の写真の比較ができたと思います。
 私が思うに、欧州は、市場が全地球的に広がっていく激流の中で、各個人が直接に市場に対峙しなければならなくなり、また大多数の人が共有できるイデオロギーが崩壊し、世界とはどういう場所なのか?を考える時にも基礎から個人として立ち上げていかなければならなくなってしまった、この社会状況の中で自分が確かに感じる事ができるのは、自分の周りにある生活の現実だけ。という考え方で腹を据えて自分の身の回りを情景を作品にして提示している、と感じました。
 で、日本は、社会になんて関心がないわ、身の回り30cmにしか興味が無いのよ、という考え方でもって無邪気に身の回りを撮っている、と感じました。それなりに切実な感じは受けたのですが・・・・ なんといっても、自分がどういう社会に存在しているのか?なぜ私写真なのか?ということが伝わってきません。
 今、蜷川実花なんかの日本の若手の写真が欧米でウケテイルのは、社会に対する関心が薄くなって、自分と、自分が存在を認めたモノやヒトだけがあれば、いれば、それでいいや、という考え方が欧米にも広がってきているからなのかしら、などと考えたりしました。
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水俣の肖像

2006-04-19
桑原史成が45年に渡って撮った水俣の写真展です。世界の公害の原点とも言える水俣を発生当時から現在まで追い続けています。水俣といえば、海外作家ではユージン・スミス、国内作家では桑原史成でしょう。2004年に関西水俣訴訟が結審したように、水俣病は過去のお話ではありません、今でも国が患者と認めていない患者がいっぱいいるのが現状です。製造業の工場移転に伴って世界中に公害も移転している身としては、無関係ではない過去、知らなくてはならない現在だと思います。

銀座ニコンサロンで今月22日まで。
大阪ニコンサロンで4/27から5/2まで。
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送還日記

2006-04-19
韓国のドキュメンタリー映画です。
韓国で逮捕された北朝鮮の工作員が、激しい拷問を受けても転向(共産主義を捨てる書面に署名すること)を拒み、20年から40年もの間、韓国の刑務所に収監されていた非転向長期囚の人達が92年に釈放されてから、2000年に北朝鮮に帰るまでをフィルムに収めています。
 北と南とで、基本的な考え方が違っていても同じ人間が住んでいて、普通に交流できる、北朝鮮に住んでいる人は悪魔でもなんでもなく、映画を見ている自分と同じ様な人が住んでいる、ということ、人と人の交流には政治体制はの違いは何の問題にもならないということが、監督と長期囚との間の暖かい交流を通して伝わってきます。
 北朝鮮と休戦中である韓国で、敵である北朝鮮との関係を生活者の視点から率直に描いた、いい映画です。

送還日記HP
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日本社会の歴史(上・中・下)

2006-04-18
網野善彦による、古代から近世の誕生までをメインにした日本通史です。
岩波新書で3分冊になってます。
日本という国が海によって閉ざされた島国である、という観点を否定し、海は常に大陸と日本をつなぐ道であり、川は内陸部と沿岸部をつなぐ道であり、日本の歴史は海路を通じて世界との活発な接触の下で営まれてきた、というのがモノスゴク大まかな内容です。また、昔の税金=米という図式がなんとなくあると思いますが、全然そんなことはなく、地域の特徴に応じた税(絹・鉄・木材・鮑・椎茸・塩・等々)を支払っており、百姓=米を作る人ではなかった、ということや、今では辺鄙な場所になっている能登半島や十三湊が海上交通が盛んだった時代に於いては非常に恵まれた立地であった、なんていうことも、読んでみると、現在の陸上中心の見方からだけでは判らないことも理解できるようになってきます。
農村には水戸黄門に助けられる貧乏農民ばかりがいた昔の日本、ではなく、各地域、各階層の人々がお互いに極めて活発に影響を与え合い、動き回っている、そういう生きた日本の過去の姿を想像することができるようになる本です。
非常に良い本です。是非読んでみて下さい。

余談ですが、広島で御調がどうした、とか書いたのはこの本を読んだからです。
日本社会の歴史〈上〉
Posted by inamiyaphotos at 22:21:36Comments(0)TrackBack(0) │本・映画・美術

お薦め本です。

2006-04-14
今まで読んだ海外小説で特にお薦めの本をのっけてみます。どれも文句無し!に面白いですから、とっつき難いとは思いますが一度読んでみて下さい。

一人の女性の人生が台湾・日本・中国の歴史と絡み合いながら物語が進んでいきます。人生と歴史と物語が融合した世界小説です。今まで読んだ中でも特に押す一冊です。
自伝の小説



世界中の人間の目が見えなくなっていったら、世界はどうなっていくのか?という奇抜な発想を出発点にした物語。とにかくページをめくる手が止まらないです。
白の闇
Posted by inamiyaphotos at 22:15:51Comments(0)TrackBack(0) │本・映画・美術

教育基本法 追記

2006-04-14
思想検事



昨日の記事を見て、何を大げさな、と思った、と思いますが、是非この本を読んでみてください。治安維持法を基として国家が国民を縛り上げていく過程、また戦前の体制から全く変わっていない公安警察・検察の体制が活写されています。トニカク一度縛りが取れるとあとはどんどん非道くなる一方です。それはイロンナ歴史が物語ってます。
 新書だから薄くて読み易いですし。安いし!!
Posted by inamiyaphotos at 20:55:22Comments(0)TrackBack(0) │本・映画・美術

クラッシュ

2006-04-14
映画見てきました。アカデミー作品賞取った「クラッシュ」です。新宿武蔵野館には金曜初回は1300円という割引があるもので。これを使えるのは私のよーな、プータロー、か、年食った人ばっか、ですね。
 良い映画でした。黒人・白人・メキシコ人・プエルトリコ人・エルサルバドル人・中国人・韓国人・イラク人・ペルシャ人・タイ人などのそれぞれの登場人物から差別に溢れた見方でもって、アメリカ社会を描いていきます。多くの登場人物がそれぞれの偏見、運命を交錯させながら物語が進んでいきます。まさしく世界中の人と金と愛がいりまじるにはどうすればいいのか?というトコロです。こんなムツカシメに書いてますが、全然重くなくて、見た後ちょっと微笑むような、そんな映画です。
 全ての人が一人で生きていけないように、グローバル経済が発達した今、どんな国も単独で存在することができなくなってしまっいます、日本も当然そうです。今日新宿のドトールで昼飯を食べましたが、カウンターではドイツ人が新宿区役所への道を尋ね、席では中国人が談笑し、外では韓国の観光ツアーが歌舞伎町見物をしてました。少子化が進み、現場労働が禁忌されている日本では、遅かれ早かれ移民受け入れ政策を取らざるえなくなるでしょう。これから個人で世界と対峙する機会も増えると思いますし、まあ、みておくんなさい。という一本です。
Posted by inamiyaphotos at 20:40:09Comments(0)</